もどる 本棚−良い声で、良い歌を(1/4)

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“良い声で、良い歌を” ご指導:大塚 由乙 先生


 皆さんにとって、“歌”というのは、どんな存在なのでしょうか?
 何のために歌うのでしょうか?
 私は、“歌う”ということをスポーツと同じように考えています。歌うということは、全身運動なのです。筋肉が緊張したり硬直していると、スポーツは出来ません。まず心をリラックスし、体をほぐし、自己を開放することから、始めなければならないのです。自分をさらけ出すこと、あるがままの自分を見せることは、大人にとってなかなか難しいことかもしれませんが、自分に素直になり、見せかけの自分を捨て、裸になることが出来れば“歌う”ということはとても気持ちのよいことです。またスポーツ同様、“歌う”ということは、精神的な影響を大きく受けます。感情を豊かに、そして心の中の動きを外に表現することの出来る“歌”は、それだけに感情や心の動きに左右されやすいのです。暗く沈んだ時、誰も陽気な歌を歌おうとは思いませんね。気分が良い時、知らない間に、口笛を吹いていたり、鼻歌を口ずさんでいたり…。こんな経験は多いことと思います。ですから、やはり精神も肉体も健康でいられるよう自己管理し、いつも気持ち良く、思いっきり歌えるよう努力したいものです。スポーツをした後の、あの爽やかさ、気分の良さを、歌った後でも味わえることを期待します。声は楽に出て、楽しく歌えなければいけません。いい声でいい歌を歌ってほしいのです。

 あなたの声は、どんな声ですか?この質問にはっきりと答えられる人はどのくらいいるでしょうか?化粧をしていない顔を素顔と言うなら、故意に作られていない声を素声(私の造語ですが)とでも言いましょうか。この生まれつき持っている世の中に1つしかない自分の声を大切にして下さい。自分の本当の素声をまず理解してみましょう。自分が発している声を自分で認識し、理解するのは難しいことです。自分の声をカセットテープに録音して後で聞いてみると、「エー、これ私の声?」なんて言いたくなることもあったと思います。しかし他人が聞くと、まさにその人の声なのです。自分の声は、自分の体の中から伝わってくる音と、外の空気を振動させて耳から入ってくる音と、2種類の音が混ざって聞こえるため、自分でははっきりと分からないのです。つまり、自分の声というのは、慣れないと聞こえてこないものなのです。ですから、しばらくは人に聞いてもらって、いい声、素声というのを見つけてもらうしかありません。


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大塚由乙 OHTSUKA Yoshito,混声合唱団フォンテ © 1992, 1998